演劇ユニットG.com

才能とは?

友田です。

突然ですが、「才能」という言葉についてちょっとお話を。何かやりたいと思う人がしばしば虜になり、人生を誤る人も続出するというこの言葉「才能」。果たして才能って何だろう。

 

その実体はやはりわからない。ただはっきりしているのは、そういうものはある、「才能」という表現で表される何物かはあるということだ。そして、才能には「大きさ」がある。手のつけようがないぐらい大きな才能というのはやはりあるし、それほど大きくない才能はそれ以上にある。やはり、大きい才能ほど希少なもののようだ。何かの分野で状況がすべてその人の周囲で回りだしてしまうとか、何十人、何百人の創作者がいようが、百年も経ってみれば結局覚えられているのはその人一人、というようなことはよくある。だれか、シェークスピア以外の16~17世紀の劇作家、知ってる?

 

しかし、あなたが生まれつき大きな才能の持ち主でなくても、絶望することはない。才能はある程度天与のものだが、同時に育てることが出来るものでもあるからだ。生まれつき巨大な才能というのもあるが、大きな才能も、ほとんどの場合は自身の努力によって築かれたもの。努力だけでなく、めぐり合わせとか、出会いとか、運の要素も大きいが、何にせよ、決まった大きさではないということだ。

 

さて、G.comというところだが、生まれつき大きな才能を持っている人など一人もいない。せいぜい中くらいの才能が集まっている。それも、若干出遅れ気味。大きな才能はやはり10代後半から20代で開花する。30歳を迎えるころには、その分野で押しも押されもせぬ存在になっているものだ。G.comには見事に当てはまらない。

 

生まれつき大きな才能は放っておいてもどんどん大きくなる。才能が状況を吸い寄せてしまうから。小さな才能は、あきらめた方が本人のため。趣味として楽しんだ方がいい。中ぐらいの才能は、実はいちばん難しい。あきらめるには惜しい。自分でも、才能はあると感じるし、周囲にもある程度は期待されている。でも状況を呼び寄せるほどの力はない。放っておいたら何事もなくどんどん馬齢を重ねていく。去年までのG.comメンバーはまさにこれであった。

 

しかし、それも徐々に変わりつつある。縁の作り方だったり、努力の仕方だったり。それによって、中ぐらいの才能は大きな才能に育つ可能性がある。研鑽あるのみ。そして、他人と力を合わせるのも一つの方法。集団としてのG.comに可能性があるとすれば、そこだ。出遅れ気味の中ぐらいの才能たち。とんだ負け犬集団だが、力を合わせれば、胸躍る冒険が待っているかも・・・なんてね。乞うご期待!

バーダー・マインホフ

「おお、あの映画が来るのか」。こないだ映画を見に行ったときに、予告編で思わずこぶしを握り締めた。ドイツ映画「バーダー・マインホフ」がやってくる。

http://www.baader-meinhof.jp/

 

昨年秋、ドイツに旅行したとき、ベルリンの映画館で上映中の看板を見かけ、思わず飛び込んだ。一言で言うと、ドイツ版「実録連合赤軍」である。銃撃・爆弾・流血。犠牲者は30人を超えるというドイツの左翼過激派「ドイツ赤軍派」(別名バーダー・マインホフ・グルッペ)の一件を扱っている。

 

70年代に暴れたこのグループ、銀行強盗、企業爆破、要人暗殺やハイジャックにまで手を染め、最後には獄中で幹部が集団自殺しちゃうというアナーキーさ。だからこの映画を真面目に見れば鬱々とするしかないはずなのだが、実際は俳優がそっくりにメイクアップして演じる幹部たちが妙にクールな美男美女ぞろい。それに加え、あまりの暴力の連鎖とスピード感に頭の芯がくらくらして「ひょっとしてすごくかっこいい??」と勘違いしてしまうという危険な映画である。

 

中でも際立った特色は女性の過激さ。このグループは最高幹部3人のうち2人が女性。スキーマスクで顔をすっぽり覆い、ドイツ人特有の分厚い身体の彼女らがマシンガンを構え、「おらおら」と銀行員を脅すところとか、ほんと、格好いい。

 

いや、だからそれでいいのかってのはあるんですけどね。そこらへんも含めてちょっと考えてみたいという人にもお勧め。

ユダヤ警官同盟

この秀逸なタイトルの小説は、アメリカのユダヤ系作家マイケル・シェイボンの作品。最近新潮文庫から翻訳が出た。アメリカでいくつも賞を受け、コーエン兄弟による映画化も予定されている評判の傑作。ただ、日本人が読むには少し背景の知識が必要で、多分そんなに売れないと思う。

 

この作品は基本的にハードボイルド・ミステリだが、設定はSF的なパラレルワールド。そして重い問いと流麗な文章は純文学のクオリティだ。この組み合わせ、実は最新作「1Q84」を含む村上春樹の多くの小説にも共通する。いま世界の文学的な想像力の向かう一つの方向のようだ。

 

「ユダヤ警官同盟」が舞台にしているのは、アラスカの架空のユダヤ人居留地「シトカ特別区」。欧州からの亡命ユダヤ人の受け皿としてアメリカが作ったものだが、2007年の現在、2ヵ月後にアメリカ政府への返還が迫っている。そしてこの世界ではユダヤ人国家としてのイスラエルは成立することなく流産。シトカ特別区廃止後のユダヤ人は行き場のない流浪の民と化することが決まっているという設定だ。この出口なしの状況の中で、ある殺人事件が起こり、心身ともに深い傷を負った中年刑事が解決のために走り回る。そして、特別区返還を巡る様々な勢力の思惑が絡み合う構図が浮かび上がってくる・・・。

 

なんでハードボイルドなのか。おそらくは複雑化した世界に、何者でもない一人の人間が向き合うたった一つの方法だからだ。簡単に踏み潰されてしまうどぶネズミのような小さな人間だからこそ、自らルールを設定し、おのれを賭けて大きなものに対して突っ張ることがドラマとなって立ち上がってくる。だからハードボイルドヒーローは基本的に人生をあきらめた中年男である必要があるのだと思う。そう言えば「1Q84」の主人公・青豆も、(女性だが)人生をあきらめた人物だ。「ユダヤ警官同盟」では、そんなハードボイルドの美学が、寄る辺無きユダヤ人の運命とも重ねあわされている。書いたように、日本人にとっては決して読みやすい作品ではないが、人生をあきらめかけている中年男女に薦めたい。結構来ますよ。

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