『トスカーナの贋作(Copie Conforme)』 - 演劇ユニットG.com

『トスカーナの贋作(Copie Conforme)』

久し振りの、アッバス・キアロスタミの映画です。岡田

キアロスタミと言って、分かる人は映画好きなのかなあ? その区分けは難しいですけれど、カンヌのパルムドールや、ベネチアの審査員賞をとっているイランの監督なので、そういう面では知っている人は多いかな。

でも、この十年はほとんど撮っていないと言うか、実験的な映画が多い。聞いたところによると、「真実は撮影できるのか?」と言う事に対しての拘り、カメラが向いた瞬間に、たとえ素人でも演じてしまう、その不自然さに疑問を持って、カメラも何もないアフリカ奥地へ出向いて映像を創り、スペインのこれも孤高の映画監督、ビクトル・エリセと映像メールの交換をしているとかと言う話は聞いていたんですけれど。

そのキアロスタミが、まさか、トスカナで、それもジュリエット・ビノッシュで映画を撮るとはねえ。と言うのが、去年の11月にフィルメックス映画祭で一回だけ上映された時の感想でした。

流石にチケット売り切れで見れなかったんですけれど、どうせやるだろうと思ってたら、やっぱり、ユーロスペースで2月から上映、なんだかんだと、また地震とかでそうこうしている内に、あれ? まだやってるのかなあ?と思って、ユーロスペースで調べたらやってました。1か月の余の上映、ゴダールの『ソシアリスム』も、結構長くやっていたし、吉祥寺のバウスシアターで再上映とかも、やっぱり日本人って映画好きなんですねえ。

『贋作』、ほとんどが、ビノシュと、イギリスのオペラ歌手ウィリアム・シメルの二人だけの会話劇。まあ、トスカナの古都を巡りながらなんで、ちょこちょこ第三者の介入はあるものの、それが刺激になったりするものの、ほとんどが台詞、台詞、台詞です。それも、初めは二人とも英語、途中で、フランス語、最後は、男が英語、女はフランス語になっていく、不思議な展開。まあフランス人とイギリス人と言う設定で、かつ、役者の母国もそうなんでそれはそれで自然と言うか。

キアロスタミは、今回がほぼ初めてで、職業俳優との仕事、まず初めに脚本ありきの撮影だったようです。でも、この本が面白い、それこそエスプリの効いた不条理劇でもこうは上手くいかないだろうなあって感じで不自然さがなく、でも結構不条理な二人の関係性が浮かび上がってくる。

でも、寂しい映画です。

キアロスタミは小津へのオマージュ映画『FIVE -小津安二郎に捧げる-』も撮っている。見てはいないんですけれど、小津生誕100年の時にNHKがキアロスタミに委嘱した作品のようです。

小津映画のもつ「寂しさ」。

もし、コミュニケーションが絶対に取れているのならば「言葉」は必要とはされない、つまり「言葉」とは、根本的に人は分かりあえないと言う事の証としてあるし、真剣に伝えようとすればするほど、共感と言うのが、絶対不可能な先に有る「何か」でしか無い事が浮かび上がってくる。「でも・・・、」と問えるのは、やっぱり、絶対的な絶望に達した人にしか伝えられない「かなしみ」なんだと思う。

でも、それでも表現していく強さ。それが共通してある感覚。キアロスタミ、次は日本で作品を創るそうです。


『トスカーナの贋作(Copie Conforme)』は↓こんな映画

http://www.toscana-gansaku.com/

≪あらすじ≫
イタリア、南トスカーナ地方の小さな街アレッツォ。講演に訪れたイギリスの作家(ウィリアム・シメル)がギャラリーを経営しているフランス人女性(ジュリエット・ビノシュ)に出会う。ドライブへ出かけた二人は、カフェの女主人が彼らを夫婦だと勘違いしたのをきっかけに、長年連れ添った夫婦であるように装う。しかし彼らがゲームのように楽しんできた虚構の関係は、時間を経るにしたがって変化していき、彼らの心のなかにさざ波が広がっていく。

主演のジュリエット・ビノシュはこの作品で初の2010年カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞、大女優としての貫禄の演技と、一方でキアロスタミの魔術にかかったような、剥き出しの演技とを共存させ見事大賞を手にした。また作家を演じるイギリスのオペラ歌手ウィリアム・シメルは映画初出演ながらこの難しい役に挑み、演じきっている。
 
監督・脚本:アッバス・キアロスタミ/脚色:マスメ・ラヒジ/撮影監督:ルカ・ビガッツィ/編集:バフマン・キアロスタミ/サウンド:オリヴィエ・エスペル、ドミニク・ヴィヤヤール/セットデザイン:ジャンカルロ・バーシリ、ルドヴィカ・フェラーリオ/製作総指揮:ガエターノ・ダニエル/プロダクション・スーパーバイザー:イワナ・カストラトヴィッチ、クレール・ドルノア
製作:マラン・カルミッツ、ナタナエル・カルミッツ、シャルル・ジリベール、アンジェロ・バルバガッロ
配給=ユーロスペース 宣伝=テレザ