今年は缶詰正月 - 演劇ユニットG.com

今年は缶詰正月

 今日は仕事おさめでした。

ここ数日、家に帰ってきたら飲まず食わずで、最低2時間の執筆を心がけています。

年末年始も缶詰で戯曲執筆の予定。だって締切りが近いんだもん。

7月の公演ですが、1月から俳優兄姉に集まっていただき、本読みと改稿を繰り返す予定。

久しぶりの新作ですからじっくり時間をかけます。

 

だいたいどんな話か書こうと思ったのだけれど、自分でもまだどんな話になるのか不明・・・。

 

とりあえず初稿の一幕一場を全文載せてみることにしやした。

どうせ、こっから全然変わると思いやすので。

瓦 礫 の 都 

 

作 三浦 剛(演劇ユニットG.com


登場人物

 

 

 

安東(日)     日本人。27歳。

 

マクドナルド(米) アメリカ人。40歳。

王(中)      中国人。35歳。

 

 

 

侵犯者(不明)   不明。30歳。

 

マルガリータ(不明)不明。10歳。

 

 

 

アルカージィ(露) ロシア人。70歳。

 

ゾーエ(伊)    イタリア人。16歳。

アドルフ(独)   ドイツ人。28歳。

ウンクルンクル(阿)アフリカ人。20歳。

青年?(都市)   都市製の人造人間。年齢性別不明。

 

 

 

調停者(?)    突然目の前に現れる超自然的人影。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プロローグ

 

 

 

 

 人工的な光を背に歩いてくる二人の人影。

 

 二人は立ち止まり辺りを見回す。

 

 

 

男   僕は、ずっと、他人の理想に乗ることでだって夢は実現できると思っ

 

    てきた

少女  うん

男   今だって、その思いは変わっちゃいないんだが、人と、他人と共に生

    きるってことは、きっと、とても、そんなに複雑なことじゃないんじ

    ゃないんじゃないかな

少女  うん

男   多分、そうなんだよ。もっと、それぞれが、それぞれにさ理想

    主義的に聞こえるのはわかってるけども、もっと、なんていうか、穏

    やかに、ゆっくりとさ

少女  うん、そうだね

男   うん

 

 

 

   立ち止まる二人の影。

 

   男の影、持っていた旗のような物を地面に突き立てる。

 

 

 

男   マルガリータ、ここに僕らの国を作ろう

 

少女  うん、いいよ

 

 

 

   暗転。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一幕一場 「砂漠にて」

 

 

 

 

   夜。

 

   空虚な風の中、一斗缶の中ではぜる薪の音。

   たき火の影に浮かぶ三人の寒々しい男達。

   闇の中から聞こえてくる会話。

 

 

 

王   食べたことないんですか、棒棒鶏

 

マック ないね。安藤、お前食ったことあるか?

安東  あるよ

マック どんな料理なんだ

安藤  鶏肉の料理だな

マック なんで棒棒鷄って云うんだ

安藤  棒で叩くんだよ、たしか

マック 生きてる鶏をか?

王   いいえ、焼いた鶏です

マック 鳥を焼き殺した上に棒で叩くのか?

王   ええ、こう、棒でバンバンって

マック それで、棒棒鷄か

王   ええ、それで棒棒鷄です

マック どうして、そんなに残虐なことをするんだ

王   身がほぐれてお肉が柔らなくなるんですよ

マック うまいのか?

安藤  うまいよ。棒棒鷄は、美味い

マック この缶詰に比べりゃあな

王   わたし、この缶詰の工場に居たことあるんです

安東  へえ、そうなの?

王   三つ前の仕事です

マック で、これは一体なんの肉なんだ?

王   知りません

マック なんで

王   わたしは缶に詰めるのが仕事だったので…でもなにかの味に似てるん

    ですよね…なんだったかな、ええとこの味は…

マック 王、思い出さないでいいよ

 

 

 

  と、目覚まし時計のけたたましい音。

 

 

 

 

安東 さあ、時間だ

 

 

 

 

  王は目覚ましを止め、三人とも上着を脱ぎ始める。

 

 

 

 

マック うぅ、寒い

 

安東  今夜も、冷えたなぁ

マック 日照時間が短いからだぜ、絶対

王   短いっていっても、二秒か三秒でしょ

マック その三秒が大事なんだよ、いいか毛沢東、自然ってのはな、我々が思

    っている以上に複雑なんだ

安東  知ってるよ、そんなことは

王   マックさん、次の仕事が落ち着いたら家に来て下さいよ。ご馳走しま

    すよ棒棒鷄

マック お前が作るのか?

王   女房が得意なんですよ、棒棒鷄

マック お前さんの奥さんは実に残虐なんだなぁ

王   はい、女房の棒棒鷄は最高です

マック お前さんもバンバン叩かれないように気を付けろよ

王   はい

安東  マック、火を消しくれ。王さん、ゴーグルは?

王   かけてます

 

 

 

  たき火が消され、辺りは一度暗闇に包まれる。

 

  安東、腕時計の秒針を見る。

 

 

 

安東  5秒前だはじまるぞ

 

 

 

 

  暫し、なにも起こらない。

 

  気まずい沈黙。

 

 

 

マック またか

 

安東  静かに

マック 5秒経ったよな?

王   やっぱりどこか壊れちゃったんですかね、太陽

安東  大丈夫、壊れちゃいないよ

マック そのうちさ、朝がこなくなってさ、誰も助けにこなくてさ、俺達はこ

    の糞寒い砂漠で朽ち果てるんだよ。で、砂になるんだ。さらさら〜っ

    て

王   はは、やめてくださいよ、怖いなぁ

安東  昨日より、さらに遅いな

 

 

 

  と、遠くからサイレンの音。

 

  そして、低いダイナモの音が轟く。

 

 

 

安東  ほら、きたきた。夜明がくるぞ!

 

 

 

 

  瞬間、中空で太陽が爆発し、辺りは白い闇に包まれる。

 

  暫くすると、安定した昼日中の明るさに落ち着く。

  

  一面の砂漠。

  あちこちから赤錆た瓦礫が顔を出している。

  中央にある一斗缶の脇には地面から生えてた蛇口。

  左手に地下シェルターへの入り口があり、右手には薄汚れたテントが見え

  る。

  遠く砂漠の向こうに都市が蜃気楼のように見えている。

  

  と、遠くから砲撃の音。

 

 

 

マック  さあ、仕事だ

 

 

 

 

  砲弾の着弾先を双眼鏡で観測する安東とマック。

 

  王は通信機を片手に二人の報告を受話器に向かって復唱している。

  激しい砲撃の音に似合わず、三人とも慣れた様子。

 

 

 

 

安東  二時の方角、距離2000

 

王   二時の方角、距離2000

マック 十一時3500

王   十一時3500

安東  三時五十分、距離150

王   三時五十分、距離ひゃ、150

マック おいおい、近ぇな

安東  十二時二十分、距離4400

マック 十時の方向、距離おお、8200だって。こいつは新記録だ

王   十二時二十分4400、十時8200!

安東  十一時四十五分、距離4000、不発

王   十一時四十五分、距離4000、不発

安東  王さん、時間は

王   ええもう、やみます

 

 

 

  と、最後の着弾音と共に、砲撃がぱったりと止む。

 

 

 

 

マック 九時十分、距離3000。まったく、どこに撃ってんだか

 

王   九時十分、距離3000。以上!

 

 

 

  と、通信機の受話器を置く王。

 

  マックは蛇口をひねり、水筒に水を貯めている。

 

 

 

マック しかし、寿命なのかね、やっぱり

 

王   寿命って、人工太陽ですか?

安東  ただの噂だよ

マック だったら、時間通りに点灯しないってのはどうゆうわけだ

安東  こっちの時計が狂ってるんだ

王   でも、その時計も実験物なんですよね? 一億年で十万分の一も狂わ

    ないって聞きました

マック その実験が成功してるって確証があればな

安東  マック、王さん。君等は不毛な問答をしてるよ

マック なんで?

安東  都市の実験に疑問を挟む余地はない。成功だの、失敗だなのを云々し

    たって意味がないんだよ。実験は、実験なんだから

マック で、俺たちは実験動物ってわけか

安東  おい、マック。君はここ最近不適切な発言が増えてるぞ

マック 誰も聞いちゃいないんだ、構うもんか。それとも調停者に聞かれてる

    とでも言うのか

 

 

 

  一同、シンとなる。

 

  マック、背筋に冷たいもを感じたのか辺りを見回す。

 

 

 

マック なんて、な

 

安東  調停者がいなくったって、俺と王さんがいる

マック へえ、じゃあなんだ。告発するってのか俺を、ええ? どうだ毛沢東?

王   いいえ、まさか

安東  その呼び方はやめろ

マック どうしてだい

安東  彼の名前は王さんだ

マック 知ってるさ、ただのアダ名じゃないか

安東  差別的な匂いがする

マック そりゃおかしい、この実験都市にはそもそも「差別」って言葉がない

    はずだろ。なんでか? そういう実験だからだ。「全人類の幸福を実現

    するため」の実験なんだから。疑問を挟む余地はない。何故か? 実

    験は実験だからだ!

安東  そうさ、だから「匂い」がするって言ったんだ

マック おや、どんな匂いなんだい?

安東  あんたら欧米人の体臭のような匂いさ

マック へえ、そりゃあ立派な差別発言じゃねえのか?

安東  いいや、あんたらの匂いを嫌いだとは一言も言ってないぜ好き

    だとも言ってないがなあ

 

 

 

  にらみ合う二人。マックの方が背が高い。

 

 

 

 

王   いいですね

 

マック なにが?

王   お二人は仲がいい。私はどこの職場でもそんなに誰かと仲良くなれる

    時間はありませんでしたから。

安東  そりゃそうさ、マックがここにいるのはなにかの手違いだ

王   わたしも出来れば、同じ仕事をもう少し長くやってみたいんです。缶

    詰工場でも、ごみ収集員でもなんでもいいんです。ひとつ仕事をじっ

    くりやって、仲間達と仕事の話をしながら一杯飲めたらいいなぁ

    って。

安東  王さん、不適切だぞ

王   ちょっと羨ましいです

 

 

 

  マック、王に詰め寄って真剣な眼差しで。

 

 

 

 

マック いいか、王。半年だぞ、半年もこんなしけた場所に俺はいるんだ。ど

 

    んな仕事も三ヶ月以上やっちゃいけねえはずの都市でだ。無意味な観

    測を半年も押し付けられてる人間に羨ましいなんて、絶対に言うな

安東  マック、無意味って言葉は使うな。都市の仕事で無意味なものなんて

    ひとつもないんだ

マック ええ、そうでしたな。実験は実験ですからな、実験のための実験はそ

    れだけで意味があるって言うんだろ、狂信者殿

安東  狂信者? マック、君はどうかしてるぞ

王   わたしは、どんな仕事だっていいんです。むしろ底辺の仕事がいい。

    無意味でもいい。分相応に仕事ができればそれでいいです

マック まったく、黄色人種の考えることは分からん

安東  おい、待てマック!

マック やめようや、どちらにしろ後三日で俺はおさらばだ。一眠りするよ、

    交代まで絶対に起こすなよ

  マックは、鼻息を荒くシェルターへの階段を降りていく。

 

 

 

マック どうしちまったんだあいつは…

 

王   不安なんですよ。私、マックさんの気持ち分かります

安東  不安?

王   安藤さん、これ本当の戦争じゃないんですよね

安東  そりゃそうさ。ここには戦争は存在しないんだから

王   だったらこの仕事はやっぱり無意味ですよ

安東  そう一概には言えないんじゃないかな

王   あっちには、誰もいなんですよね?

安東  そうさ

王   いないはずの敵国に向けて砲弾をうつ。その戦果を観測し、敵の反撃

    に備えて警備する。これは無意味です

安東  王さん、それ以上言うな。不適切だ

王   だからいいんです、私は無意味がいいんです

安東  え?

王   誰の毒にも、誰の薬にもならない。こういう仕事は好きです。出来れ

    ばずっとここにいたいです。でも、マックさんはもっと、役に立ちた

    いんですよ。自分は本当に役にたってるんだろうか? 誰のために? 

    なんのために? って

安東  王さん、誰かが一人でもわがままを通したら、この実験は体をなさな

    いよ

王   ええ、分かってます

 

 

 

  暫しの沈黙。

 

 

 

 

王   安東さんは信じてるんですね

 

安東  なにを?

王   都市の実験を

安東  王さんは、信じてないのかい

王   いいえ観測を続けます

 

 

 

  王、仮想敵国の方に双眼鏡を向けて押し黙る。

 

 

 

 

安東  コーヒー飲むかい?

 

王   ええ…あれ?

安東  どうした?

王   都市の方から誰かきます

 

 

 

  安東、双眼鏡を手に取る。

 

 

 

 

安東  本当だ

 

王   配達の人ですかね?

安東  配達人は三日後のはずだ

王   じゃ、誰です?

安東  都市から来てるんだ、敵じゃあないよ

王   じゃあ、あっちから来たら敵なんですか?

安東  だから、あっちには誰もいないって

 

 

 

  二人はその場で観測を続けている。

 

  その後ろにぼうっと、都内のバーが浮かび上がる。