川端康成 小説『千羽鶴』 - 演劇ユニットG.com

川端康成 小説『千羽鶴』

デカダンスの妖しい揺らめき、

『千羽鶴』は、戦後、昭和24年からの数年間に雑誌等に数回に分けて書かれた小説で、続編として『波千鳥』がある。今の新潮文庫だと、両方が入っているけれど、昔は、『千羽鶴』の方だけでした。

あらすじ、冒頭だけあげると、

三谷菊治は、亡き母の友人であり、左胸に痣のある茶道の師匠、栗本ちか子の招待で「見合い」を兼ねたお茶会に出掛ける。お茶会には、亡父の愛人・太田夫人、その娘文子も来ていた。
見合い相手のゆき子のお手前で、黒織部の茶碗で一服もらった菊治は、同じ織部で茶を飲んだ太田夫人と一夜を過ごす……。

と、背徳的で、官能的な世界。それが、織部、志野、了入、唐津、長次郎等、安土・桃山の古陶器を背景に紡がれていく。

ただ、なんとなく、ぼーんやりとした印象なんですよね。何度か映画化とかもされていて、結構、ドロドロ系の話になってる、そう言う面が無いわけじゃあない。

でも、作家自身はこう言っている、

「夢魔のように朦朧とした人物の動きの中心、あるいは上空に確然とした古陶の美が浮かんでいると良かったと思えるが、美が確実と書けなくて、古陶と朦朧とした夢魔のようになってしまった。」(『月下の門』)

朦朧とした夢魔って感じ。夢だか現だか分からない世界。同時期に書かれた『山の音』は、戦後小説の第一の作とも言われる、きちんとした作品。千羽鶴は、そのなかから、ぼんやりと、不思議な古陶器がゆらめいているようにも感じられる。