つたわるもの、つたえる事
岡田
ルノワールって好きな画家です。幸せなんだよね。人生が。作家のプルーストにも感じるんだけど、幸福。まあルノワールの絵は、そういう主題が多いから、そうだって言えばそうなんだけど、もっと根本的なところで「幸せ」なんだと思う。
年譜をみれば、40代からリウマチを患って、ほとんど病気との闘い、指は奇妙に曲がり固まって筆も持てず、包帯で手に縛り付けて絵を描いている。晩年、確か梅原龍三郎が毎年訪れたようだけど、年々、小さく縮んで行くようだって悲痛なように回想していた。
でも、晩年に行くほど絵は開放的になって、「幸福」と言う感じに満たされる。
新国立美術館の「ルノワール展」。あんまり良いのがないんだけど、やっぱりその感じは伝わってくる。今回、赤外線での解析とか言うコーナーがあって。40代と70代の比較とかあったんだけど。40代だと線の描き直し、複数の絵の具の使用とか、やっぱ試行錯誤の後が、絵の背後に見られる。でも70代には無いんだよね。輪郭のブレがない。絵具も確信をもって使ってる。
そして何より重要なのは、「描く」と言う事が喜びに満たされている。それは対象とか、絵の内容とかではなく、「描く」と言う行為自体が、もはや「喜び」以外の何物でもないという状態が、「絵」を通じて伝わってくるからだと思う。
所詮、蛆に食われるこの肉体は有限なものでしかない。でも、だったら何で「無限」を知ったのだろうか? 「つたわる」って事の背後にはそんな事も潜んでるのかなあ。
晩年のルノワールの手、リウマチで関節が変形している。この手に絵筆を括り付けて描いた。右腕の骨折や麻痺、両足の麻痺。車椅子での生活。それでもあの幸福な世界を創造できるのか。孤独。孤独。

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