神の名において......、 - 演劇ユニットG.com

神の名において......、

In  Gottes  Namen ってドイツ語です。
岡田です。
「なるようになるもの」とかって訳されるんですよ。でもやっぱ「神の名において」だと思うんです。

リヒャルト・シュトラウスのオペラ『薔薇の騎士』。主人公の元帥夫人、30歳位なのかなあ。不幸な結婚、孤独。17歳の甥オクタビアンと恋に落ちる。いわゆる不倫。若さは猪突猛進、でも若い熱情は消えるもの、いつか若い女性に奪われていくという覚悟も持っている。

R・シュトラウスが活躍したのは19世紀末から20世紀前半。ナチに協力したりと、あまり芳しくないこともあったけれど、ワーグナーのオペラを受け継ぎ、オペラ好きが最後に行き着くところとも言われるオペラ作曲家。

シュトラウスのオペラは繊細なんだよね。生きていくと、年をとる。若い熱情だけでは語れなくなる部分が大きい。たとえば「老い」。シェークスピアやモーツァルトには無いんだよね。いつまでも若い。もちろんリア王は老人だけれども「老い」ではない。「老い」を認識していればあの悲劇はなくなる。

一幕後半。鏡を見つめる元帥夫人。いつにない不安を感じて、夜中に時計の針を一つづつ止めた話をする。オクタビアン「愛は永遠だ、いつまでも愛し続ける。」。「若さ」と「永遠」その真っ只中の17歳。その言葉がどんなに人を傷つけるかも知らずに、叫び続ける。涙ながらに、それは真実ではないと訴える元帥夫人。
二幕。オクタビアンは、若いゾフィーと恋に落ちる。
三幕。すべてを受け入れた元帥夫人は、若いゾフィーとオクタビアンを結び付ける。オクタビアンの役は女性ソプラノのパートなので、この三人はすべてソプラノ。三幕ラストの有名な三重唱。ゾフィーもすべての関係を知り、元帥夫人が譲ろうとしている意志を受け入れる。二人が結ばれ。一人去っていく元帥夫人がつぶやくのが
'In  Gottes  Namen'
まあ、確かに意味の直訳は「なるようになっていく」だろけれども。やっぱり「神の名において......」って感じがするんだよね。

生きてくのは辛いし、世の中そんなにうまくは行かない。青春の時期を過ぎれば、すべてが奪われていく長大な時間が待っている。おそらく「神々」の作用ってその「奪い去り」の事だと思う。神や仏が居る限り「生」は苦しく、悲惨に満ち満ちる。だからこそ、でもだからこそ生きて行くと言う事の「輝き」がある。そのことに足を踏み入れる、その入口に居ることに、ふっと気付いた時、やっぱ「神」とかって名前がでてくるんじゃないかな。

「神は老獪にして、悪意を持たず。」って言ったのは、同じ頃のアインシュタイン。

吾の愛聴盤は、1964年録音カラヤン指揮、オケはウイーンフィル、元帥夫人がシュワルツコフ。ザルツブルグ音楽祭の放送用録音だと思う。そのCD版、つまり海賊版。ARKADIAとか言うイタリアのマーナーレーベル。同じ音源の他のマイナーレーベルもあると思う。
この曲ってやっぱりウィーンフィルなんだよね。カラヤン、シュワルツコフだったら、57年録音の正規版がEMIから出てるけど、オケがフィルハーモニーオーケストラ。やっぱいまいち物足りない。

変わったところでは、RCAから、ハンス・クナッパーツブッシュ指揮、元帥夫人マリア・ライニングもウィーン・フィル。おそらく、ウィーン・フィルの魅力という点では、このCDの方が上だと思う。クナッパーツブッシュはやっぱり天才。
ただ、ずれてる。歌手がいようがお構いなし、オケだけ先行して、音楽と歌詞がズレようが、全くお構いなしの指揮ぶり、みんな歌いずらそうなんだよね。本当に好きな人には良いけれど、これって何?って言う人も多いかも。

無難なのは、84年(正確には82~84年かな)録音のカラヤン指揮、ウィーンフィル。歌手とかは60年版より落ちるけど全体のアンサンブルや、録音、音の綺麗さではこれが一番だと思う。グラモフォンから出てます。確かDVDでも出てるけど、これはCDがお勧め。CD用にいろいろ効果を加えてあって、それが功をそうしてるんだと思う。DVD見て、同じ音源とは思えなかった。