大地の恵み - 演劇ユニットG.com

大地の恵み

その町に降る雪の白いことといったら、そりゃもう不当なぐらいですよ、とおっさんが言うのだった。不当って何さ。そんなことがあるんかいと聞くと何だか真面目くさった顔、そりゃあなた、雪の白さなんてどこでも同じだと思ってるんでしょ、という。

 

雪の白さに違いなんかあるんですか。同じでしょ、同じ。どこに行っても天は一つ、そこから降ってくる雪の色に、やれ、より白いだとかもっと白いだとかますます白いだとかいっそ白いだとかあるもんですか。

 

それがあなた、あるんだから面白い。大気の具合だったり、空気の具合だったり。サケの具合だったりね。サケ?サケって魚のですか。

 

そうそう、そのサケですよ。サケが、豊漁だとね、何だかその川の流域の雪は白いんだとか。うそでしょ、どういう関係ですか。わかりゃしませんよ、そんなことはね。

 

そこで私は頭の中で、川を群れなして遡上してくるサケの群れを思い浮かべた。そのサケが腹の中にたっぷりと溜め込んだ卵のことを考えた。そしてその卵の中から、稚魚が一匹一匹生まれてくるところを。ぶつぶつの卵の一つ一つを破って、目玉のついた稚魚が湧いてくるところを考えた。そこまで考えると、気持ち悪くて吐きそうになった。

 

そう言えばその三日前、昔の友達から久しぶりに電話がかかってきて、いきなり、あなたが夢に出てきたのでご報告します、と言ったのだった。あなたは古い日本家屋で、囲炉裏に向かって座っている。囲炉裏には火が燃えていて、そこに網が乗せてあって。あなたは網の上にサケを乗せて焼いていたんです。そう言って電話は切れた。

 

私は友達がサケ、と発音するのを聞いて、焼きジャケの香ばしい匂いがするように感じた。それで、サケを焼いている気持ちのまま、天を見上げてみた。天井に換気のための窓が開いていた。黒灰色の空が見えた。その小さな空間を、ほとんど数え切れないほどの雪が、肉眼で捉えきれないほどの速度で通り過ぎていった。その一つ一つの雪に、確かに稚魚の小さな目玉が付いているのを、私は見た。