塔と花畑 - 演劇ユニットG.com

塔と花畑

授業を受けていると、日本人の同級生が話しかけてきて、「ワールドトレードセンターに飛行機が突っ込んだんですって」という。セスナか何かだろうと答えた。それっきり、気にもしなかった。

 授業が終わると昼近い。教授たちが3人、廊下で話しこんでいる。それ自体珍しい光景だった。イギリス人の背の高いリンズレー先生が「タワー・コラプスト」と言っていた。塔が崩壊した。えっ?

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  図書館へ行くと、入り口付近に天井から吊るしたテレビ、ふだんは開館時間とか利用案内を映し出しているそれがCNNに合わされ、鈴なりに学生が集まって、飛行機がワールドトレードセンターに突っ込んでいく映像を声もなく見上げていた。

 午後の授業は中止。ニューヨーク市から車で8時間の我が留学先には、ニューヨーク出身の学生も多くおり、大学が急遽仕立てたバスで実家に帰っていった。翌日から町は星条旗で埋め尽くされ、戦争が始まることがはっきりわかった。アフガニスタンへ。陸軍の奨学金で学んでいる学生に召集がかかり、泣き叫んだ学生もいたと聞いた。「最初からそういう約束なんだから、しょうがないよね」。それを伝えた学生の感想だ。

 あれからもう8年。『倒壊する巨塔』というアメリカ人によるノンフィクションを読んだ。ビンラディンやザワヒリたちの生い立ち、彼らなりの正義感や行動が、いかにワールドトレードセンター攻撃につながっていったか。

そしてそれを迎え撃つアメリカの治安機関。CIAとFBIがそれぞれに重要な情報を持っていた。共有できたなら、阻止はおそらく可能だった。FBIの担当官、ジョン・オニールはいちはやくアルカイダに注目し、その行動を予測していたが、実行犯たちがとっくにアメリカに入国していることを知らなかった。その情報はCIAが持っていたから。有能な捜査官にありがちな敵の多さが災いして、彼は望んだ地位につけず、立場を失ってFBIを去る。2001年8月下旬のこと。彼が選んだ再就職先はワールドトレードセンターの保安主任だった。アルカイダの行動を予測していたが故の選択だったという。9月11日、オニールは炎を上げる南棟に入っていったまま戻らなかった。

 ビンラディンの狙いは「帝国の墓場」アフガニスタンにアメリカを引きずり込むことだったと、著者は言う。大英帝国やソ連など、古来アフガニスタンで深い傷を負った国は数知れない。峻険な山中のゲリラ戦では、近代兵器も威力を発揮できない。そして、命知らずでどんな大国にもひるまないアフガンゲリラたち。アメリカも、イラクからは抜け出せても、アフガニスタンからは抜け出せそうにない。増派に継ぐ増派。積みあがる死者。オバマ政権の致命傷になる可能性もある。

 

 黄色い一面の花畑。小さな女の子が笑っている。

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 昨年アフガニスタンで殺されたNPOワーカー、伊藤和也さんが遺した写真の一枚。アフガニスタンにも、当然のように子どもがいる。きょうも明日も、楽しそうに笑ってる。生きることはそれだけで美しい。そして、悲しい。