ゴミでした。もとい、ゴミ屋さんでした。まあ今も、あんまり変わらんかなあ。
岡田です。
「ゴミ屋さん」と言うのも何ですが、正確に言うと、廃棄物収集運搬業です。例の青い車、清掃車。車種としては「パッカー車」って言います。僕、こんなんですが4tロングのパッカー車に乗ってたんだよ。
ちなみにあれ、4t車って言いながら6t位は入ったりします。何せ一番重いのが、そうそう「水」なんです。ってことは、水っぽい生ゴミが一番重い。運転しててもよろよろしまっせ。
そんでもって、どんなに綺麗にしてても湧くんですなア。例の白くって動くもんが。一時、洗車場が壊れた時があって、そんときはもう。あはは。
巨大な奴も出現。まあ普通はハエの幼虫ですが、あれはアブだと思います。みんなで「女王うじ」とか言ってた。でもねえ、あいつらもスゴイですよ。綺麗にしてても、ほんのちょっとの、そう、車のパッカー部分の隅っことかの、ゴミだか何だか泥みたいになった所をちょこっとホジクルと居るんですね。りっぱりっぱ、生きてございです。
まあ収集運搬なんで捨てる訳です。そんでもってあの頃は、東京湾の中央防波堤にそのまんま埋め立ててました。お台場の海底トンネルを抜けると、ほれ、別世界。広々とした世界に、穴のあいたブットイ鉄パイプがぶつぶつと刺さってます。地上4m位かな。
何か?って。まあ、ガス抜きですな。ゴミが発酵してメタンが生まれます。地下で溜まると引火して爆発するんで、そのガス抜き。
一回だけ、何個もあいた穴から青い炎がでてたかなあ。そうそう、その穴から、何か細長いもんが何本も出てた時があった。なんじゃろなああ?って思って、近づいた。フランスパンが何本も刺さってました。
でもねえ。写真で見たんだけど。舞踏家の土方撰だったと思うんだけど、あの風景の中で全裸で土に埋もれてる写真集があった。「あの土」違うんですがなあ。におうんです。分かる人には分かると思うけど、グリストラップ汚泥(僕たちは、単に「ゲロ」って呼んでた。)の匂い。まあ、なんとも言えない、クササを超えた危険な匂いがね。まして、毎日掘り返すって言うか、ゴミ、土、ゴミ、土の繰り返しだから、草一本、はえとりません。
でも、たぶん「生命」ってそんな中から出てきたんだと思う。だって「カオス」だし。混沌だし。大地と空と危険な空気、なんか根源って感じだよ。
hitoshirenu tohki taninite
昔は四畳半の片隅に転がっているビー玉しか美しいものがないなんて家もざらにあったに違いなく、それはさぞ鮮烈な美しさだったろう。縁日のちょうちんの明かりの下、水ヨーヨーの赤や青がぐるぐると回る。それで充分に満たされて、その日その夏を過ごしていく安らかさ。
もう17,8年も昔、千葉県の外房の農村に2年駐在して、そこは毎年5月になると蛍が群れを成し、それも8時前後の30分ぐらいがピークで、その後は全く消えてしまう。蛍の群れは、一斉に明滅する。数千匹、数万匹という群れがどのようにしてペースを合わせているのかは、完全には解明されていない。
カメラを構え、蚊に刺されるのも厭わず光を追った。儚きもの、写真を撮り、記事にはしてみても、決して定着できない一瞬。記事もまた蛍の点滅よろしく、どこかへと消えうせて、今では行方もわからない。だからこそ良かった。
アフリカのある地方では、年に一度だけ、大きな峡谷を蛍の光が埋め尽くす。しかしそこは前人未踏の地だ。ふんだんにばらまかれる光を、誰一人、見る者もいない。水を飲みに来たジャッカルやレイヨウの、黒いガラス球みたいな目玉に光が映る。その時、彼らが何を思っているのかはわからない。